ブロックチェーン技術がもたらす、物流業界の変革と進化
近頃、ビットコインという言葉を耳にしない日がないのではないか?日本でも数年前からメディアで取り上げられるようになり、今年初めには、ビットコインを始めとする「仮想通過」に関する法整備が、世界でも先駆けて日本で行われたことで大変話題となり、世界からも日本の仮想通過市場が今注目されている。この急成長を遂げている仮想通過ビットコインを支えている技術・システムが、本日のテーマ、「ブロックチェーン」である。
現在、このブロックチェーン技術を、物流業界に導入しようという動きが世界中で加熱・加速している。今回はこのブロックチェーンの特徴とメリット、そして、それによって実際に物流業界が抱える問題に対してどう対処することが出来るかを説明する。
目次
1. ブロックチェーンの特徴とメリット
2. 物流業界の問題と解決法、メリット
3. 物流業界における、ブロックチェーンの導入例、開発例
4. 考察
1.ブロックチェーンの特徴とメリット
(1)特徴
①分散型台帳である
ブロックチェーンには、これまでの、政府や銀行といった中央主権的な情報やシステムの管理者はいない。では誰が管理者であるかというと、それは世界中に散在するパソコンである。世界中にあるパソコンで全く同じ除法・データを保存することで、誰かが不正や情報の改ざんを行わないかを相互にチェックして、安全性と公正さを担保している。これによって、P2P(Peer to Peer)方式と呼ばれる、個々のユーザーを直接ネットで繋ぎ、直接やりとりすることを可能としている。
②過去の全ての情報が、1本の鎖状に不可逆的に並んでいる
現在主流の情報システムとは大きく異なり、取引や決済、商品といったあらゆるものの、過去から現在までの全ての情報が1本の鎖所に繋がっている。このように、情報をトランザクションの鎖として保存することで、情報の改ざん耐性が非常に高くなるのである。なぜなら、過去のある1つの情報記録を変更したい(改ざんする)場合、それ以降の全ての情報も変更しなければならなくなるからである。
(2)メリット
①情報管理の安全性が高く、透明性も確保できる
先ほど、上の特徴でも説明した通り、過去の記録や情報の改ざんが事実上不可能であり、世界中のパソコンで情報の真正性がチェック出来ることにより、安全性、公正性、透明性が確保される。
②仲介者コストを始めとする、コスト削減と時間短縮
P2P方式と情報の透明化によって、相互の信頼関係も築き易くなることから、プレイヤー間の直接取引を安全かつ迅速にすることが出来るようになる。その結果、仲介者への手数料やそれに伴う手続き時間が無くなるため、金銭と時間のコスト削減が可能となる。
2. 物流業界における問題と活用メリット
(1)現在の物流業界が抱えている問題(ブロックチェーンによって解決可能なもの)
①過去の取引実態や決算情報など信用情報の取得に時間がかかるため、第三者機関(銀行など)からの信用担保が必要でキャッシュフローを圧迫している。
②輸入者と輸出者の取引銀行が直接取引しない場合もあり、通常2~4の銀行を経由する必要がある場合もある。また、それに伴う手続き時間が長く、送金手数料を国内外の複数の銀行に支払う必要がある。
③情報の散逸による、情報の透明性が著しく低く、物流の流れの最適化が出来ないでいる。
④プレイヤー間において、過去の取引記録や決算情報などが分からないため、信頼関係が築きにくい。
(2)解決法とメリット
①ブロックチェーン上にて、過去の取引や決算情報などの全ての情報を遡って確認することが出来るため、与信機能を果たすことが出来る。
②P2P方式によって、当事者同士が直接取引をすることができ、また送金も銀行などの仲介者を通さずに、迅速に行うことが出来るため、決済コストと時間コストを削減することが出来る。
③Googleのような、中央集権的データサーバーへと、自らの情報を提供する場合と比べて、他の情報と自らの情報を分散型台帳形態で保持できることにより、導入への心理的ハードルが下がる。
3. 物流業界における、ブロックチェーンの導入例、開発例
(1)BiTAによる、ブロックチェーンのトラック運送業界への導入
BiTAとは、トラック運送業界を中心に物流業界にブロックチェーンの技術導入を推進している団体である。日本のブリヂストン社も参加している団体である。BiTAによると、ブロックチェーンを導入することで、トラック運送業界の課題を解決できる、大きく5つのメリットがある。
①ドライバーに運送賃を即座に支払うことが可能となる。
②記録の改ざんが事実上不可能になるため、メンテナンス記録の透明化が実現し、迅速に確認が取れるようになる。
③トラックの燃料や部品の自己負担が迅速に行えるようになる。
④輸送貨物の品質やクレームに対するやり取りが効率的かつ公正に行えるようなる。
⑤輸送記録や安全管理の記録改ざんが事実上不可能となり、安全性、品質の向上、”見える化”により、より公正な取引が可能となる。
参照URL
(2)NTTデータを中心とする、ブロックチェーン活用の貿易業務に関するコンソーシアム
NTTデータは、ブロックチェーンを活用した、信用取引と保険証券、2件のPoCを実施し、それによって、ポジティブなブロックチェーン有効性と課題が見つかった。
参照URL
http://news.mynavi.jp/news/2017/08/16/040/
(3)中国のアリババとPWCが共同でブロックチェーン流通システムの開発
中国の大手eコマース市場のアリババと世界的な大手コンサルティング会社PWCが共同でブロックチェーン流通システムを開発することになった。ブロックチェーン技術を利用して、非常に流通している偽造品を中国市場から締め出し、本物の品質の良いものを取引しようという意気込みが伺える。
参照URL
https://fintechonline.jp/archives/101788
4. 考察
このように、ブロックチェーンの特徴とメリット、そしてそれが物流業界の抱える問題をどう解決するかのかを説明してきた。今現在、確かに、ブロックチェーンはまだビットコインを代表とする仮想通貨の域においてのみ大規模の活用されている。しかし、その本質的なポテンシャルは非常に高く、様々な業界においての応用が期待され、開発が進んでいる。この技術が流通業界に実装されて行けば、業務効率は大きく上がり、世界中で今よりも更に貿易・流通が発展し、世界がより豊かになって行くだろう。
ラストワンマイル問題に取り組む世界のStartups
「ラストワンマイル問題」という問題が、物流業界に存在することをご存じだろうか。
今回はラストワンマイル問題について、またラストワンマイル問題を解決しようとしている世界中のスタータップについて紹介してゆく。
目次
1.ラストワンマイル問題とは
2.ラストワンマイル問題に取り組んでいる世界のスタータップ
3.Shyp
4.Doorman
1.ラストワンマイル問題とは
ラストワンマイルとは、主に通信業界で使われている言葉で、直訳すると「最後の1マイル」になる。最寄りの基地局から利用者の建物までを結ぶ、通信回線の最後の部分で物理的な長さではなく、通信事業者と利用者を結ぶ最後の区間という意味である。
昨今、通信業界だけではなく、物流業界においてもこのラストワンマイルをめぐる攻防がある。消費者が小売店で商品を購入し自宅に持って帰るという行為は、いわゆるセルフサービスにあたるが、自分の好きな時間に注文できて、自宅まで届けてもらえるネット通販が盛んになっているのも、このラストワンマイルを消費者にうまく提供しているからと言える。
また、ネット通販最大手であるAmazonが大型のフルフィルメントセンターをいくつも建設して、当日配達、翌日配達といった配送サービスを充実させるのも、このラストワンマイルを制するための動きだと言える。
2.ラストワンマイル問題に取り組んでいる世界のスタータップ
小売業界でも注目すべき分野となっているラストワンマイル問題には、世界中でも様々な企業が取り組んでいる。
不在配達をなくすことをモットーとしているサンフランシスコのDoorman、世界初となる宅配物を車へ配達するサービスを提供しているVolvo Cars、即日配送を行うために物流倉庫を構築しているユニクロ、ドローンを使用しているAmazonのPrime Air等が代表的である。
3.Shyp
その中でも今回は、いくつかのスタータップを取り上げたいと思う。まず、「Shyp」について。
「Shyp」は個人や企業向けに、商品の梱包から配送まで一貫したサービスを展開するサンフランシスコ発の物流スタートアップ。現時点ではサンフランシスコをはじめ、ロサンゼルス、ニューヨーク、マイアミ、シカゴにてサービスを提供している。
配送依頼はスマホアプリから商品の写真を撮影し、集荷先と配送先を指定するだけ。集荷の際に送りたい商品をそのまま渡すだけで、梱包から配送まで一貫して行ってくれる。配送先は世界中どこでも指定できる。
価格は基本料として20品ごとに5ドルかかるほか、配送料が別途発生する。FedExやUPSなどの複数の業者と提携しており、商品や配送先に応じて最も安い手段を提案してくれる仕組みだ。配送料は集荷後数時間で知らせる。
元eBay出品者でもあるCEOのケビン・ギボンによって2013年に設立された「Shyp」。配送業務にかかる時間と手間に不満を感じていた同氏は、出品者の悩みを解消するためにサービスを開始した。
4.Doorman
次に紹介するのは、「Better Package Delivery is Great For Ecommerce」を掲げるラストマイルロジスティクススタータップの、Doormanである。
消費者はEコマースサイトで買い物をし通常通り支払い手続きを行う。その際、商品配送先を自宅ではなく、Doorman集配所を指定する。商品は輸送会社によりDoorman集配所に配送され、ここからDoormanが自宅に配送する仕組みとなる。
Doorman集配所に商品が届くと、消費者のスマホにメッセージが送信され、Doormanからの配送スケジュールを設定する。このときに配達日と時間帯を指定する。配達時間は午後6時から深夜までで、二時間の枠で指定できる。(ただしゴールドメンバーになると一時間の枠で指定できる。)
配達時間は利用者の帰宅後の時間帯で、日中に家を留守にしている消費者を対象にしたサービスだ。休暇などで不在の時はDoormanは30日間無料で商品を預かる。同日配送するためには午後5:30までにスケジュールを行う。パッケージの大きさは40ポンド(約20キロ)までとなっている。
創始者のZander AdellとKappil Israniによると、Doormanの事業はUberのモデルを参考として作られたという。Adellは、「Uberの便利さを宅配サービスに応用する」と述べ、「大手企業の宅配サービスは”ルート最適化”で」効率化を追求しているが、消費者にとってのメリットは小さいと説明。Doormanは「”顧客最適化”を行い利便性を追求する」と、その構想を語った。
貿易業務でのOCR利用とは
貿易業務では、様々な書類が必要となる。その書類の管理や処理に手間やコストがかかってしまうこともしばしばあるだろう。ここで、OCRという技術を活用することは有効と言える。
そこで、OCRとは一体何か?について今回説明する。
1.OCRとは
2.なぜ今OCRが有効か
3.情報をデータ化するメリット
4.OCRは何に利用されているか
5.実際の導入例
1.OCRとは
OCR(Optical Character Recognition/Reader、オーシーアール、光学的文字認識)とは、手書きや印刷された文字を、イメージスキャナやデジタルカメラによって読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術である。
人間は文字を無意識のうちに認識している一方で、実は様々な過程を経ている。そして、その過程の中には、現在のコンピュータが不得意とするものもある。
「文字の部分を見つけて、読む順序を決める」ことから「左右の線を上から下に移動しながら、この線が文字と交差する数をカウントして、すき間のところを文字と文字の区切りとして判断する」までの処理は、人間にとってまったく意識することなく瞬時に行える処理だ。また、「正規化、特徴抽出、マッチング、知識処理」という処理では、例えば「夕方」という字を見ればその「夕」がカタカナの「タ」ではないことを人間はすぐに判断できるが、コンピュータでは「夕方」という言語情報を持っていない限り判別が困難だ。
文脈が分からなければ、「大好き」の「大」の右上にシミがあったら「犬好き」と読んでしまうように、人間が簡単に行えることでも、コンピュータには大きな障害になることは多く存在する。それを理解し、あらかじめ最低限の障害を取り除くことで、OCRはずっと使いやすいものとなる。
2.なぜ今OCRが有効か
社内の重要な情報は依然として紙上にあることが多く、その情報を全てキーボードから入力していたのでは到底追いつかない。いつでもどこでも必要な時に、必要とする人が容易に情報にアクセスできることは、業務の効率を向上させる大きな要因である。またそうすることにより、情報はいつも新鮮であり続けることができる。
しかし、この様な理想的な環境の前に立ちはだかるのが、情報のデジタル化に伴う処理の煩雑さだろう。これらをキーボードから入力していたのでは、時間がいくらあっても足りないうえ、この様な単純な作業は、時間とともに生産性が落ちてくる。
3.情報をデータ化するメリット
情報をデータ化することによるメリットは大きく分けて2つあると言える。
まず、スペースの省スペース化だ。情報をテキストデータ化することにより、物理的な保管スペースを劇的に小さくすることができる。段ボール箱いっぱいの書類も数メガバイトに収まる。また、画像情報をテキストデータ化することにより、メモリ上の保管スペースを約700分の1にすることができる。
次に、検索の迅速性だ。情報をテキスト化することによって、文書をイメージで保管する場合に検索機能を使って、欲しい情報を素早く検索できる。
4.OCRは何に利用されているか
OCRは、「データ入力」や「文書管理」など、様々な用途で活用されている。
<データ入力>
データ入力で用いられる原稿は、主に「伝票」や「帳票」と呼ばれます。OCRの利用面から「伝票(帳簿)処理用OCR」と分類される。特長は、読み取ったデータを業務ソフトウェアと連携して、データ処理することが目的となる。
<文書管理>
文書管理に用いられる原稿は、書籍、論文、契約書、新聞などあらかじめ形式の決まっていない文書が対象となり、OCRの利用面から「文書OCR」と分類される。特長は、キーワードで検索できるように全文のテキスト化を行ったり、読み取り結果を市販ソフトウェア(WordやExcel等)にて、再編集することに用いられる。
5.実際の導入例
ビジネスシーンにおいての導入例として、レオパレス21は5月26日、賃貸契約書類などの入力業務にAIを活用した文字認識システム「Intelligent OCR」を導入すると発表した。これまで各種申込書や社内書類の大部分を手作業でPCへ入力していたが、Intelligent OCRの導入で、従業員の作業時間を年間で約2万900時間削減し、約4200万円のコスト削減を見込んでいる。
レオパレス21、AI×OCRで契約書類を自動入力 年間4200万円のコスト削減へ - ITmedia エンタープライズ
また、行政においてもOCRは活用されている。東京23区で最も人口の多い世田谷区では、住民税を処理するために120万件にものぼる関係書類の入力作業が必要であるため、これを高精度のOCRによってイメージ処理することで、大幅なコストダウンを実現した。それに付随してサービス向上をも成し遂げたという。
導入事例:紙とデジタルの橋渡し――OCR処理で住民サービスを向上した世田谷区 - ITmedia エンタープライズ